僧帽弁狭窄症 MS
#循環器疾患 #心雑音
<20250527 三枝先生>
僧帽弁の変化により開放制限
慢性的に左房に圧負荷がかかるため。うっ血による症状が生じる(心不全)
リウマチ性が多かったが大幅に減少
【成因】
以前はリウマチ性MSが多かった現在は大幅に減少
高齢に伴い、弁輪石灰化など変性によるMSが増加(流速が大動脈弁より遅い)
少ない
【病態】
弁狭窄に伴う左心房から左心室への血液流入障害
左心房圧の上昇→肺静脈圧の上昇→肺うっ血 ※二次性肺高血圧による右心系拡大を来しやすい
左心房圧負荷により心房細動を生じやすい 血栓ができやすい不整脈 脳梗塞を調べてみたらMSがあった、、、
緩徐ながらも経年的に進行する
軽症例で進行が速い傾向
【問診】
労作時呼吸困難、息切れ
既往歴 リウマチ熱?「微熱が続き,抗菌薬治療を受けた」 #リウマチ性心疾患
(左房内血栓による)全身塞栓症
■僧帽弁閉鎖不全症の原因
近年,リウマチ性は激減し,非リウマチ性の腱索断裂によるものが増えている.
1.弁膜の器質的病変
①リウマチ性病変……MSの合併が多い
②感染性心内膜炎
③心内膜床欠損(ECD),Marfan症候群
④外傷性(胸部打撲)
2.弁支持組織の病変
①腱索・乳頭筋断裂(下壁梗塞,リウマチ熱,感染性心内膜炎,外傷などによる)
②僧帽弁逸脱症候群(先天性,後天性)
3.機能的閉鎖不全(弁輪の拡大,左室収縮異常など)
①拡張型心筋症
②先天性心疾患
③心筋梗塞
【身体所見】
■僧帽弁狭窄症の聴診所見 #心雑音
心尖部領域に雑音(→僧帽弁領域の雑音)
●Ⅰ音の亢進:硬化した弁の閉鎖音
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●opening snap(僧帽弁開放音):開放運動が完了した後の突然生じる弁尖の緊張化
●拡張期ランブル(左側臥位でよく聴こえる.):狭窄弁の血流通過音
※重症化すると、弁の可動性が低下し僧帽弁開放音が消失する(mute MS)
●前収縮期雑音……AFが起こると消失する.洞調律のとき聴かれる.
●重症例で,Graham Steell雑音(=拡張期灌水様雑音(肺高血圧になった場合のPR雑音),胸骨左縁第2〜3肋間)
■慢性期の僧帽弁閉鎖不全症の聴診所見
収縮期雑音:Ⅰ音(僧帽弁の閉鎖音)と重なって始まり,Ⅱ音大動脈成分を越えて終わる全収縮期逆流性雑音は,音の強さが一定でやや高調であり,心尖部外側に最強点を持つ.心尖部から腋窩・背部方向に放散することが多い.
Ⅲ音:左心室は拡張期に,左心房は収縮期に容量負荷が生じる状態であり,Ⅲ音を聴取する.このⅢ音は房室間血流の増加を反映するが,必ずしも心不全状態を意味しない.
Ⅰ音:Ⅰ音は減弱,あるいは正常である.
Ⅱ音の分裂:左房への逆流があるので左心室の収縮時間は短縮傾向になり,Ⅱ音の大動脈成分は早期に出現する.右心室負荷により肺高血圧をきたすと,Ⅱ音の肺動脈成分の音量が増大し,遅れて出現する結果,Ⅱ音の分裂は拡大する.
拡張期雑音:逆流量が多く相対的な僧帽弁狭窄症が生じる時は,心尖部で拡張期中期にランブル様雑音を聴取することがある.
■僧帽弁閉鎖不全症の病態の特徴
左房:LA容量負荷→LA拡大→肺うっ血、肺高血圧→右心不全
左室:LV容量負荷→LV拡大→左心不全
●MRではⅠ音に続く全収縮期逆流性雑音(「シャー」),Ⅱ音(「ト」),Ⅲ音(「コ」)が聴診上の特徴である.(「シャートコ」と聴こえる.)
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心エコー
MSの診断、重症度評価、血行動態評価に有効
僧帽弁尖開放低下、弁尖肥厚
経皮的僧帽弁バルーン切開術(PTMC)に適した形態か判断
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Mモード心エコー
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弁尖の癒着があるも弁膜の肥厚・硬化が軽度にとどまると,拡張期に僧帽弁前尖の弁膜は左室側に凸にふくらむ.これを僧帽弁前尖のdomingと呼び,MSの特徴的な所見である
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胸部X線
左心房拡大→左第3弓突出
右心不全、肺高血圧→左第2弓、右第1,2弓突出
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心電図:
左心房拡大→P波幅延長、V1のP波陰性成分(二相性P波)
右心負荷→V1、2のR波増高
心臓カテーテル検査
僧帽弁圧較差測定:左心室、肺動脈楔入圧同時圧測定
【治療】
1.薬物療法(前後負荷調整、弁硬化は治らない)
心不全症状がない段階では、心エコーによる定期的な経過観察
心不全症状を伴う場合、一般的な心不全治療薬を用いる(利尿薬、β遮断薬など)
高率に心房細動を合併→抗凝固療法が必須(ワルファリン)
※MSを合併した心房細動のDOACのエビデンスはなく推奨されない
ジギタリス:房室伝導を抑制して心拍数を減少させ,心収縮力を高める
ワルファリン:AFで左房内血栓の形成を予防するのに有効
2.外科的治療
薬物療法を行っても労作時呼吸困難があり、中等度MSの場合、外科治療もしくはPTMCの適応
無症候でも、新規心房細動や左房内血栓、塞栓症既往あれば外科治療もしくはPTMCの適応
開心術(弁置換術または交連切開)
直視下僧帽弁交連切開術(OMC):若年症例、機械弁置換を回避する目的(再手術回避率 7年で93-96%、10年で87-89%)
僧帽弁置換術(MVR)(再手術回避率 10年で95%)
3.カテーテル
経皮的にバルーンカテーテルを用いて僧帽弁口を拡げる経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC).静脈系から心房中隔を穿刺し、左心房側にカテーテルを挿入。僧帽弁をバルーンで拡張し、交連部の癒合を裂開し弁口を拡大
このような症例でワルファリンを使用せずにいると,左房内(特に左心耳内)に生じた血栓が末梢に流出し,脳梗塞(脳塞栓),四肢の動脈塞栓,腸間膜動脈塞栓,腎動脈塞栓などを起こす可能性が高くなる.妊娠出産に耐えられるように
特徴的な身体所見や治療法がある
負荷がかかる場所を考えると検査所見の特徴がわかる
基本的に症状は呼吸困難
心エコーで示された所見は答えられるようにしておく